日記

あす"きの日記、あす"にっき

リズと青い鳥 感想

君はもうリズと青い鳥を見たか。

私はユーフォ3期が始まったときに慌てて劇場版5作品を見た愚か者。劇場で見ることができなかった敗北者。

もっといえばユーフォ1期を見たのが多分2020年とかなので,時代遅れも甚だしいことこの上ないよ。

感想いかせていただきます。

 

リズと青い鳥

liz-bluebird.com

 

監督:山田尚子

脚本:吉田玲子

製作:京都アニメーション

 

もうこの時点で,どうしようもないほどに綺麗な作品になってしまうことが避けられないでしょう。

 

始まりは昇降口前。アンビエントな音楽に合わせて,声は聞こえないまま。贅沢に時間を使いながら音と映像が支配する空間へ。

もうこの段階でこの作品のやり方が十分に表れてしまっていて,つまり声ではなく,それ以外の音と映像によってこの作品は語られるんですよ!こんなん絶対映画館で観たいじゃないか。見させてほしい。あの暗闇で,それ以外に支配するものがないあの空間で,この映像と音に包まれたらどんなにか。

 

物語はオーボエの鎧塚みぞれとフルートの傘木希美をメインに,進級した3年生が主な登場人物。アニメ本編とはだいぶ異なる雰囲気に合わせて,黄前久美子ら2年生があまり登場しないことで普段とは違う表情を見せる3年生たち。

リズと青い鳥というタイトルは,劇中劇として登場する童話のタイトルから来たもの。登場人物を劇中劇のキャラと重ねるよくあるパターンね。そう思いながら序盤を眺めていました。自由の翼をもった青い鳥は交友関係が広く後輩とも仲の良い傘木希美,それを鳥かごにとどめているリズがやや人見知りで希美に依存している鎧塚みぞれね。よくあるパターンといってもこの作品の主役は音楽と映像。声だけに頼らず,繊細な表現で物語を彩るその才はさすがに京アニ

 

中盤では進路調査の話でやや不穏な空気に。音大受験を勧められた鎧塚みぞれ,それを聴いて私も音大受験をしようかなと傘木希美,さらにそれに乗る形で音大受験を決める鎧塚みぞれ,友達が行くからって理由で大学を選ぶなとわたし。それに重ねて,オーボエとフルートの相性が良くないという指摘が入り,流れる微妙な空気。

ここで効いてくるのが鎧塚みぞれに音大受験を勧めた外部講師の新山さん。得意分野は木管楽器。新山さんはみぞれには音大受験を勧めたが,フルートの傘木希美が音大受験を考えていることを聴いても微妙な反応。

 

ここから物語は一気に加速。鎧塚みぞれは自身をリズに重ねており,リズのように青い鳥を手放すことはできない,好きな人を手放すことなんてできない,リズの気持ちが分からないと。それに対し新山,

 

あなたが青い鳥だったら?

 

~~~~!

 

そういうことです。そうだったのかよ。なんて,ことを。

鎧塚みぞれが青い鳥。傘木希美がリズ。

好きな人の翼を奪っていたのがリズで,かごの外に飛び立つのが青い鳥。

 

そしてやってくるオーボエとフルートのソロパート長尺演奏シーン。もはや言うことが無くて,音と映像にすべてが載っていて。

 

その後,二人の長い会話シーン。みぞれの実力を見て自分のレベルがそれに追いついてないとやや卑屈になる希美。多分この作品の中で一番会話の密度が濃いシーン。

二人のどちらがリズで,どちらが青い鳥なのか。それを自覚したうえで交わされる,やや的を射ない言葉の応酬。

でも最後には,リズであることを自覚した傘木希美の一言,

 

みぞれのオーボエが好き

 

この一言でもう物語は結末にたどり着いてしまっていて。

大受験をやめて普通の大学に進路を定めた傘木希美。

希美の一言でオーボエの道に進むしかなくなった鎧塚みぞれ。

この結末への持って生き方があまりにも急激で,淡白で,それがゆえに素晴らしい。

 

残りの時間は再び音楽と映像の時間。交わされる言葉は少なく,それでいて濃密で,見る私の心の空間を広くしてくれる。

物語冒頭の登校シーンの真逆,今度は下校のシーンで物語は締めくくられます。冒頭とは待つ側と待たれる側が逆転していて最後まで隙がない。

そして最後に置かれるハッピーアイスクリーム!このおちゃめさよ。

 

本当に,なんでこの作品を映画館で見ることができなかったのか。わたしの人生でかなりでかめの失態。

 

Blu-ray,買います。初回限定盤ほしいけどプレミアがつきすぎてるので通常版で勘弁。